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週刊Neue Fahne

2018年11月12日号

視野狭窄に陥ることのない雇用調整への覚悟ある対処

「人手不足」が叫ばれ、国会では不足する人材確保に向けた拙速とも思える入管法改正の審議も始まっている。一方で連日のように金融業界、IT業界、医薬品業界を中心に個別企業での大規模雇用調整実施の報道がなされている。一部には「人手不足なのになぜ、リストラなのか」といぶかしがる向きがある。比較的業績が堅調とされる業界での雇用調整の展開は、過去のバブル崩壊やリーマンショック後に展開されたもと一線を画していると捉えなければならない。
  一言でいえば、昨今のAI(人工知能)やRPA(業務自動化)をはじめとするロボット技術、さらにはICT(情報通信技術)の長足の進歩が、各企業に従来からの業務展開のあり方を再考させる素地となっているということだ。当然にもこれは、従来からの日本の雇用制度の転換と軌を一にしている。先に成立した「働き方関連法」も日本の雇用制度の転換を円滑化なら占める露払い的なものであると抑える必要がある。

  一昔前までは企業が雇用調整を展開する場合には、「辞めてほしくない人材」と「辞めてもらってもかまわない人材」を単純に区分することもできた。こうした単純区分の下では、従業員に対して“これといった取り柄がなく、会社への貢献度が低い社員は、遅かれ早かれ淘汰されることになるだろう”という危機感が通用した。
  もっとも、短兵急に雇用調整を繰り返した企業が陥ったのは、「辞めてほしくない人ほど応募してくる」という矛盾であった。つまり、希望退職などの募集を行うと「辞めてほしくない人材」がさっさと見切りをつけて辞めていくという負の効果を企業にもたらすこともあった。有り体にいえば、企業の側が従業員の側から見切りをつけられてしまうというケースである。

  個別企業にとって職務能力から見た場合の「必要人材」は、企業体質や歴史的経緯などによっても異なる。また、これはその時々の企業の置かれている業務展開のあり様によっても異なる。しかし、就労意識の面から見たならば、A社で「不要な人材」であると判断された者が、B社で「必要な人材」であるわけがない。またB社で「必要な人材」であると思われている者が、A社では「不要な人材」であるはずもない。
  つまり、就労意識上での「必要な人材」と「不要な人材」は、企業ごとに異なっているわけではない。まして、企業規模で異なるわけでもない。就労意識が低いものはどこの企業でも通用しないということだ。これは、今日の雇用調整の場面でも変わらない。

  ここ最近顕著になってきた雇用調整は、過去の雇用調整のように業績が悪化した個別企業による一過性なものと位置づけてはならない。あくまでも日本の雇用制度の全般的な転換期によってさらにもたらされていると捉える必要がある。雇用調整は今後とも終身雇用や年功序列という従来の雇用制度が崩壊とAI(人工知能)、RPA(業務自動化)、ICT(情報通信技術)の発展過程で不断に展開されることになる。もちろん自分の職務能力を自ら磨く努力は当然のことであるが、同時にあらゆるレベルでの雇用調整に覚悟して対処していく必要がある。
  とりわけ、現場マネジメントに携わる者にとっては、“企業組織から自分に与えられた仕事のみに依存せず、自らと部下の意識形成を磨ぎ澄ます”という姿勢を堅持しなければならない。ひとは得てして自分の身の上に発生しない問題は、他人事のように思ってしまう傾向がある。雇用制度それ自体の枠組が転換する時代には、マネジメントの側が個別企業の視点からのみ物事を見ているならば視野狭窄に陥ることになる。

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