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週刊Neue Fahne

2020年09月14日号

ジョブ型雇用を踏まえた働き方 -5- 過去の「成功体験」に囚われない

 ビジネスの世界に限らず「成功体験」がもたらす功罪は、あらゆる分野で語られている。ひとはなぜ過去の成功体験に囚われてしまうのか。それは、自らの成功体験を否定してしまうと「自分自身の存在が否定されるのではないか…」と錯覚してしまうからだ。このために過度に従来からの経験に固執して、結果的に時代から取り残され、新たな挑戦を行うことが億劫になる。
 残念なことに「成功体験」はなかなか消えるものではない。しかも仕事上での成功は思い出すことが快感ですらある。このため自分が行って得た成功の体験は「うまくいったやり方」となり、いつの時代にも続くと思ってしまうことになる。組織的な「成功体験」も同様だ。しかし、時代変化の激しい今日では、過去の「成功体験」はすぐに陳腐化してしまうものだ。

  自分の経験を「在りし日の輝かしい思い出」としていつまでも自分の心に留めておくことは決して悪いことではない。また、積極的に自ら「成功体験」を積んでいくことも重要なことだ。それは自らの成長動機ともなるからだ。しかし、企業という組織生活のなかで、過度に自らの「成功体験」を持ち出してしまうと様々な弊害を発生させてしまうものだ。例えば、部下や後輩から仕事上での相談に対して、アドバイスにもならない単に自分の「昔の自慢話」の披露などだ。
  コロナ禍でさすがに減少しているだろうが、いまだに居酒屋で見かける光景として、上司と思しき中年が、部下に向かって「オレの若い時は…」であるとか、「あの時は…」などと自分の「成功体験」を披露している場面に遭遇する。こうした「成功体験」を聞かされている若手社員の心境は、「また、始まったよ…、そんな昔の話をされても…」というものだろう。

 確かに個々人にとっての「成功体験」は大切なことである。本人にとっての「自己肯定感」にもつながるかもしれない。しかし、問題なのは「成功体験」がともすると「経験主義」として、組織の活性化を阻害するということだ。また、多くの「成功体験」を持っている者に限って「経験主義」に陥る危険性がある。ビジネスの世界では「経験主義」に陥ると現実の市場や経営環境の変化を全く顧みず、単に昔と同じ手法を無闇に繰り返してしまうことにもなる。
 成長している企業の経営トップは表現上の違いはあるが、概ね「過去の成功体験を捨てよ」と説く。それは経営トップが描くビジョンを達成していくためには、現在から未来を想定したならば「過去の経験は邪魔なだけ」と考えているからだ。こうした経営トップからすれば、いくつかの「成功体験」にしがみつく社員の姿勢は実に「視野が狭い」と映るものだ。

 現在進行形の新型コロナウイルスの蔓延では、過去にどのような成功があろうが収束した後の社会状況が読めず、否応なく不確実な状況が連続的に続くことになる。過去の「成功体験」が通用しない以上は、企業を取り巻く激しい環境変化に対応するため、常に異業種や異業界に幅広く目を向け、世間の動きに関する情報を察知する感度を鋭く磨いていかなければならない。「これまで前例がない…」という口実で新しい方法や発想に躊躇していれば、新たな「経験」を積むことすらできない悪循環に陥ることになる。
 悪循環を自ら断ち切り「守りの姿勢」に陥らないためには、過去の「成功体験」に囚われてはならない。ジョブ型雇用において問われてくるのは、自らの「成功体験を捨てる勇気」を持てるか否かである。「成功体験」から逃れられない者は、未来に意識を切り替えることができない。

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