人材育成が社員と会社組織の協働を創りだす

HOME >週刊Neue Fahne(高齢者雇用と中高年の再就職 −1− 継続雇用者へのマネジメント)

お問い合わせはこちらから 03-5297-1866

お問い合わせフォーム

株式会社ノイエ・ファーネ

東京都千代田区神田錦町1-4-8
ブロケードビル5階B

TEL.03-6260-5700 FAX.03-6260-5701

週刊Neue Fahne

2021年09月06日号

高齢者雇用と中高年の再就職 −1− 継続雇用者へのマネジメント

2013年から施行された「高年齢者雇用安定法」が2020年2月に改正されて今年4月から施行されている。2013年からの施行では企業に高齢者雇用において1.定年制の廃止、2.定年の引き上げ、3.継続雇用制度(再雇用など)の導入、のいずれかで、希望する従業員を65歳まで雇用しなければならなくなった。また、2025年からは全ての企業で従業員が希望すれば65歳まで雇用しなければならないと定めている。改正法では70歳まで雇用を継続する努力義務が発生することになった。
  70歳までの就業確保措置は(「努力義務」)の流れは、将来的に社員の健康状態や意欲に応じて70歳まで働ける環境を整備する責任を企業に課していくものだ。従業員にとっては年金受給時期とも絡んでそう単純なことでもないが、一見すると朗報と受け取ることもできる。一方で、企業にとっては相当に負担が大きい。そもそも定年制は現行の労働法制で企業にとって唯一の解雇権みたいなものだ。そして、何よりも一旦定年退職した従業員に対する処遇とマネジメント面において現場マネジメントの負担が増加することだけは確かだ。

「人生100年時代」という喧伝とは裏腹に高齢者雇用は、「年金受給年齢の引き上げ」と明確にリンクしている。つまり、高齢者雇用問題は日本の社会保障制度、とりわけ年金制度改革と密接不可分の関係にある。2020 年の日本の総人口に占める高齢者人口の割合は 28.7%であった。また、労働力人口総数に占める65歳以上の者の割合は11.8%と上昇し続けていることも確かである。
  このため、「高年齢者雇用安定」は、「年金受給にいたる直前まで可能な限り、企業での就労期間を延長さ、年金受給開始時期を延ばす方策」と捉えておく必要がある。現状では多くの企業で「3.継続雇用制度(再雇用など)」を導入しているが、「定年退職後の再雇用社員のモチベーション維持」が大きな課題となってきている。端的にいえば従業員の中に芽生える「定年後で給料は少なくなったとしても65歳までは会社での雇用が維持される」というネガティブな「ぶら下がり思考」との対峙が迫られることになる。

  現場マネジメントにとっても継続雇用制度は、「新たに部下となる継続雇用者との関係性を踏まえながら現役世代である部下のモチベーション維持に配慮しなければならない」という課題を突き付けている。何故なら「モチベーションの低い継続雇用者」を放置するならば、現役世代のモチベーションが減退し、組織全体に「ぶら下がり意識」が蔓延してしまうからだ。
  この問題を放置するならば職場に「つまらない世代間の対立」を産み出し、職場環境を悪化させることにもなる。まして、継続雇用者が過去の成功体験を振りかざし、現役従業員の業務に対して口を出しはじめるならばなおさらだ。しかもこの「過去の成功体験」の披露が決して悪意ではなく「善意」ないし「無自覚」になされるため始末に悪い。

 継続雇用者の活用において、第一に留意しなければならないことは、再雇用を希望する従業員に対して定年前から再雇用での働き方や自らの役割について明確に自覚させることである。つまり、決して自動的に「働き続けることができる…」という意識を持たせてはならない。また、「定年」によって一旦従来の労働契約が終了し、継続雇用により「新たな労働契約を結ぶことになる」という建付けを理解させなければならない。
  同時に現場マネジメントは、継続雇用者に「何を求めるのか」「何を期待するのか」「どのような目標を設定するのか」という点を明示化できなければならない。現場マネジメントが遠慮して何となく「今まで通りの仕事をしてもらう」という姿勢をとってはならない。継続雇用者に退職前とさほど変わらぬ役割や職務を安易に与えることは、結果的に継続雇用者の野放図な行動を許すことになる。

一覧へ

ページのトップ