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週刊Neue Fahne

2022年08月01日号

現場マネジメントが担う部下育成課題 -1- 「ぶら下がり意識」の徹底的な排除

企業組織において従業員に課せられた任務とは、企業(上司)からの指示を正確に受け取り、指示の内容を明確に理解した上で、指示内容に基づいて実践して成果を上げて企業に利益貢献することである。これは企業人にとってごく当たり前のことであり、企業に新入社員として入社して最初に学ばなければならない「働き方」と「仕事のやり方」の基本的前提でもある。仮に中途採用者であったとしても学業を終えて最初に入社した企業での就労を通してこの基本的前提を会得していなければならない。
  ところが、この「企業組織で働くことの基本的前提」を理解していない者が企業内の各階層に非常に多くなってきている。いわゆる「若手社員」であればまだしも、中堅社員の中にもこの基本的前提が覚束ない者も散見され始めている。この原因は多々あるだろう。そもそも最初からこの種の基本的前提が不明瞭で、機能体組織としての体をなしていない企業も存在していることは確かだ。この種の企業では従業員に対する育成概念も希薄である。一方で新入社員研修でのプログラムがマナーや業務スキルの修得に偏重している可能性もある。

  新入社員が配属先で最も幻滅するのは、自らが新入社員研修で教わった事柄と既存従業員の態度との乖離である。つまり、新入社員研修で教わったレベルの内容を実践しない(できてない)先輩の存在である。また、組織に染みついている不思議な暗黙のルールの存在などである。さらには、他者から見て業務内容が不鮮明な社員の存在、およそ具体的な業務に携わっているとは思えないが、日がな一日社内を闊歩する不思議な中高年の存在である。
  新入社員は配属先でこの種の光景に出くわしたならば選択は二つに一つである。さっさと見切りをつけて転職をしていくか、社内の雰囲気に同化するかである。最近とみに新入社員の離職率の高さが喧伝され、あたかも新入社員の側だけに何がしかの問題があるかのようにいわれる。しかし、離職率の高い企業は新入社員から「見切りをつけられた」という側面も直視しなければならない。

 早期離職する新入社員たちの全てが、企業に見切りをつけたわけでもないだろう。夢見がちで就労観それ自体が未成熟な者もいる。しかし、入社した企業において自らの力を発揮するイメージを描くことができないと感じ、“自分がいるべき場所ではない”と判断する者も多い。この種の新人は先輩社員たちの現実の働く姿に自らの5年後10年後を重ね合わせた可能性もあるということだ。この意味で早期に離職する新入社員の存在は企業の現状を映し出す鏡と捉える必要がある。
 恐ろしいのは新入社員が配属先で展開されているさまざまな不合理を無批判に受け入れ、すぐに「同化」してしまうことだ。これまで現場ではこの種の「すぐに同化する新入社員」の方が重宝がられてきた。何かと自分の意見を主張する新入社員よりも、とりあえで上司の指示に黙って従っている者の方が扱いやすい。実はここに大きな落とし穴がある。上司にとって扱いやすい新人は単に上司の指示に従い「いわれたことを熟すことが仕事である」と勘違いし始める。これが何時しか習い性となり結果的に「指示されなければ動けない」状態になる。

  世の中が複雑に変化し市場や顧客の要望も多様化している時代にあって、企業自身も変化対応が迫られている。企業の方針や上司の指示を無批判に「追随」しているだけの従順な従業員の存在は、早晩企業にとって“お荷物”になることは必定である。ところがいまだに“自分の仕事は、会社や上司の指示や命令に従っているだけで、責任は会社や上司の側にある”という意識の従業員が再生産されている。そこでこれまでの人材育成の再考が迫られる。
  これから人材育成の肝となるのは自分自身が企業組織の構成員として、企業や上司からの指示・命令に対して、ただその通りに実行するだけではなく、指示や命令の意味を咀嚼し、自分の頭で考え主体的に行動することを奨励することだ。もちろん、年齢や社歴による経験を無視してよいというのではない。しかし、自分が行う仕事に対し臆することなく、いまの自分のレベルと立場での責任をしっかり自覚して、自分の考えやアイデアを腹蔵なく主張させていく風土づくりと人材育成を同時並行で展開していかなければならない。

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