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週刊Neue Fahne

2022年10月24日号

現場マネジメントが担う部下育成課題 -7- “責任をとる”のではなく“責任を持つ”

 日本では責任者が職や地位を辞任することで“責任をとる”という風習がある。これはどうやら武士の切腹が責任を取る方法として行われてきたことに由来するらしい。この考え方は果たして今もってビジネスに通用するだろうか。そもそも仕事上での責任には大きく分けて二種類があるといわれる。
  それは「経過」に対する責任と「結果」に対する責任である。経過に対する責任では、仕事を行っていく過程で発生するさまざまな問題に対して、自分が果たすべき役割や任務を全うしているか否かが問われる。一方で結果に対する責任では、経過に対する責任を果たしているが、最終的な結果に対して自分に帰すべき責任の有無が問われるということだ。

  仕事を行っていく上で往々に陥りがちなのが“自らに経過に対する責任がない”という点をことさらに強調して、結果に対する責任に無頓着となる傾向だ。例えば仕事の上で他部門・部署とのリレーションが悪く、顧客への納期に間に合わないという事態が発生したとする。こうした事態が発生した場合に二つのケースで対処の仕方で責任に対する捉え方で違いが発生する。
  第1のケースでは、自分は他部門・部署に対して納期の段取りをしっかりと伝え、役割分担を確認し調整もしてあった。しかも、自分の非ではないことが明確となる記録もあるため、他部門・部署の責任を追及する。第2のケースでは、顧客への納期を守ることが先決なので、責任の所在は後回しにして納期に間に合わせるためにあらゆる手段を講じる。

  第1のケースでは“自分は経過に対する責任を果たしている”ことになる。しかし、この責任とはあくまで「経過」に対する責任である。第2のケースでは経過についてはともあれ、顧客への納期が守れない危険性が生じているという結果に対して、自分が負うべき可能な対策を行う。このため「結果」に対して責任を重視していることになる。ビジネスの世界では基本的に「結果」に対する責任がすべてである。「経過」にける自らの責任の有無ばかりに目が行くならば“プロセスを踏んでいる”ことだけを一種の免罪符にすることになる。
  この場合の免罪符とは自己保身に他ならず、発生している結果に対して無責任に振舞うということである。仕事のプロセスにおいては常にさまざまなアクシデントが発生するため、最初から最後まで順風満帆ということはない。このさまざまな局面でのアクシデントに対して、その都度適切な状況判断が求められる。そして、この状況判断にもとづいて適時においてプロセスの変更を繰り返すから「よい結果」が得られるのである。

  誰しも失敗やミスを犯すものである。時には上司や顧客から「責任をとれ!」と怒鳴られることもある。果たして“責任をとる”ということは、どのような意味なのであろうか。「会社を辞める」ということが“責任をとる”ことなのだろうか。巷ではさまざまな不祥事が発生した場合に、一定のポジションの者が職や地位を辞任することで“責任をとることにする”という風習がある。
  しかし、職や地位を辞する、あるいは会社を辞めることが本当に“責任をとる”ということではない。仕事で発生した失敗やミスという結果への責任のとり方とは、「仕事を通して失敗やミスを挽回する」という以外に方法はない。同時にそもそも“責任をとる”以前に重要なことは、自分に与えられた一つ一つの役割や任務に対して“責任を持って取り組んでいく”という姿勢を重視することの方が先決である。自らの役割や任務に責任をもって取り組んでいない者が、軽々に“責任をとる”などということ自体が厚顔である。

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