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週刊Neue Fahne

2023年10月02日号

マネジメント行動の再検証-16-同質性の罠を回避する管理職の度量

自らの判断基準で部下を判断することはもはや通用しない。自らの判断基準とはとどのつまりは自らが育ってきた社会環境によって形成されたものであり、今日の若手社員が育ってきた環境で通用するとは限らない。「上司の背中を見て育つ」などという牧歌的な育成が通用したのは、二昔も前の話である。
  部下育成において今日この種のやり方を踏襲したならば、すぐに「何も教えてくれない上司」という烙印を押されるか、ハラスメントを受けたと訴えてくるのが関の山である。もちろん、部下からの批判を過度に恐れる余り、若手社員の行為行動に対して無関心を装うならば、同じ批判を浴びることになる。

  若手社員に対する評価は非常に難しくなっている。例えば、「ミスは少ないがマイペースでしか仕事をしないタイプの部下」(A)と「キビキビと仕事を片付けるがミスもある部下」(B)のいずれを評価するのかという問題は非常に難しい。仮に自分がスピードを重視するのであれば、(B)を評価するかもしれない。そして、(A)に対する評価は相対的に低くなる可能性もある。
 ビジネスは生ものであり状況によって変化するのが必定である。従って(A)が評価される状況もあれば、(B)が評価される状況もある。つまり、常に評価も状況対応でなければならない。(A)に対して「あいつは仕事が遅くてダメだ」とマイナスの判断をするか。逆に(B)に対して「仕事は早いが、正確性に欠ける」と判断するのかは、状況次第であり自分の思考性の問題と切り離さなければならない。

  人は自分と同じ価値基準、同じ思考方法をする人間に好意を持ち、理解を示すものである。ともすると同じものの考え方をしない者を排除し始めるものである。しかし、管理者が部下を評価する場合に、同じタイプの部下ばかりを評価しているならば、組織は同質性の罠に陥り組織の活力が失われてしまうことになる。
  同質性の高い集団は阿吽の呼吸で物事が進む可能性が高い。この点では意思決定が速く合理性が高い。一方で物事に対してフレキシブルに思考することなく、極めて平凡でその組織にとって常識的となっている答えを選択しがちになる。同質性の低い組織は意思一致を勝ち取るためには非常に時間がかかるものである。そして合意形成のスピードとの二律背反が発生することになる。

 今日では同質性の高い組織が持ち合わせているさまざまな弊害があらわれはじめている。その最たるものがコンプライアンス問題である。過去のやり方を無批判に踏襲し、疑問に思う者を排除するようなことになれば、組織内に際限なく「これまで通り」という思考が蔓延することになる。これを防ぐためには組織内に異分子を意識的に埋め込んでおく必要がある。とりわけ、管理者は自分と違うタイプを認め、受け入れなくてはならない。例え自分と正反対の価値観で、意見が衝突する部下であっても許容する度量を持っていなければならない。
  確かに部下との価値観の相違は非常にストレスがかかるものである。その違いが大きければ部下を受け入れることに抵抗を感じるものである。同じ考え方の、同じような価値基準の部下が集まった組織は、一見、まとまりがよく見える。職場は和気あいあいとした雰囲気で、管理者の指示に対して、部下は素直に従ってくれるだろう。だが、そうした似た者同士の集団からは独創的なアイデアが生まれにくい。管理職が部下に対して好き嫌いの感情を持つことが悪いわけではない。しかし、それを部下の評価に反映させてはならない。組織が同質性の罠に陥ることを回避するためにも横並びを尊ぶ判断基準を捨てて、敢えて異質をもあくまでもその働きによって評価することができるか否か。管理者としての度量や判断力が試される。

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