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週刊Neue Fahne

2024年02月05日号

人口オーナス(負担)期の日本社会-3-自覚的な変革を試みる目的意識的な姿勢

 一般論として人口増加が短時間で見込めない以上は、人口オーナス期において従来の経済状況を維持しようと考えれば、労働生産性を上げるか生産年齢人口を増やすしかない。日本の労働生産性の低さがことさらに批判されて久しいが、要は一人ひとりが「生産性をあげて効率良く働く」ということだ。
 人口ボーナスの時代には都合のよかったビジネスモデルも大きく転換させていかなければならない。これまでは一人ひとりが同じことをすることで生産性をあげるビジネスモデルが効率的であった。単純にいえば作れば売れた時代のモデルは人口減少社会では成立しない。個別企業では商品・サービスにおいて他との差別化を図り、如何にして付加価値を付けられるかが問われることになる。

 日本社会全体を見た場合には、生産年齢人口を増やすために女性や高齢者の雇用を促進し、外国人(移民を含めた)や障がい者の雇用についてもより一層拡大する必要がある。一言でいえば人口増加時代に都合のよかった社会システムを大きく転換させることである。この転換の中には婚姻制度や入管制度の変更も不可避となる。有り体にいえばダイバーシティの仕組みづくりである。
 一方で個別の企業ないし個々人の働きにおいては、当然のことながら一人ひとりの働きに対して“如何にして付加価値を付けるのか”という視点を中心に据えていかなければならない。とりわけ個人に必要となるのは、自らが“効率よく働く”とはどのような意味なのかという自問である。自分の働きの生産性が低いままの状態でワーク・ライフバランスを思考しても所詮は“虻蜂取らず”ということだ。

 日常のそれぞれその業務に対して、その合目的性を検証することが非常に難しい。今日一定の年齢に達した者にとっては、自分が入社した時点から習慣的に行っている業務がある。そして、その多くの慣習は人口ボーナス期(高度経済成長期)に形成されたものである。部外者から見たならば、「今日では全く意味がない」(ムダ)と思われる業務が多く存在している。しかし、それを行っている本人たちは文字通り「自分の仕事」として一所懸命に行っている。このため当該の担当者は、自分の行う業務に疑問さえ持たない。何故ならば「これが自分の仕事だ」という意識が強いからだ。
 毎回の会議のたびに長時間かけて作成される「資料」が、実際にここ何年も会議で使用された事がない等々…の「怪奇現象」も資料作成を命じている者、そしてそれを作成する者も習慣としての「自分の仕事」をしっかりと行っているという意識である。同じ職場にいる者が仮に薄々無駄な業務であると認識していたとしても、当事者を慮ってそれを指摘しない。これもある意味で習慣性である。こうした職場に存在する意識が実は生産性を下げている元凶なのかもしれない。

 労働生産性は物的労働生産性(生産物の物量÷労働量)と付加価値労働生産性(付加価値額÷労働量)で計算される。ただし、これは単なる計算式に過ぎない。あくまでも生産性を上げるために問われるのは、過去の発想を優先し、特定の業務を決められた方法で属人的にこなす習慣化した働きのスタイルからの決別である。同時に習慣性に対して一人ひとりが自覚的に変革を試みていく姿勢を確立していく意識注入を不断に行わなければならない。
 一人ひとりの自覚的な変革姿勢ではマインドセットが何よりも重要となる。それはリスクヘッジからリスクテイクへの思考転換だ。リスク回避一辺倒では企業も個人も成長はない。何よりも現状に対して受動的な安定を求めてはならず、適時適切に“リスクをとる覚悟”が求められる。そして、予測不能で混沌としたVUCAという変化の激しい時代は、“変化はビジネスにも自らにもチャンスになるかもしれない”というポジティブな発想が必要だ。

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