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週刊Neue Fahne

2026年04月20日号

中小・中堅企業に内包する管理職人材の課題-9-警戒すべきは“井の中の蛙”

 中小・中堅企業の管理職が最も警戒すべきは、知らず知らずのうちに「井の中の蛙」に陥ることである。ともすると閉鎖的な環境下では、外部の新鮮な情報が流入する機会は極端に少なくなる。中途採用者が現れても定着せず、数年で離職するケースが多ければ、他社の標準的な感覚や市場の適正な手法は社内に蓄積されない。このような環境では、上司はいつの間にか「お山の大将」へと変貌する。部下の前で傲慢に振る舞い、自らの未熟さを棚に上げて権威を振りかざす。外部から見たならば漫画的でさえある。
 だが、悲劇的なのは、部下もまた外の世界を知らないがゆえに、その振る舞いの異様さに気づけない点にある。上司は己の漫画的愚かさを自覚できず、部下はそれを管理職の常態だと誤認する。この無知の連鎖こそが、組織を根本から蝕む要因である。

 この閉鎖性に拍車をかけるのが、組織の未熟さと歪んだ評価構造、そして組織全体に蔓延する強力な「同調圧力」というバイアスである。多くの中小企業は計画的な新卒採用を継続できておらず、人員構成は世代間に大きな空白がある寄せ集めになりがちだ。本来、組織はチームとして機能すべきだが、こうした歪な構造下では「異質なもの」を排除し、内輪の論理に従順であることを強いる特有のバイアスが働きやすい。
 仕事がある程度できるというだけの社員が、傍若無人に振る舞うことで「目立つ」存在となり、周囲もその空気に飲まれて異論を唱えなくなる。評価者である管理職や役員もまた、適切な教育訓練を受けていないため、客観的な実力よりも「組織の空気に馴染んでいるか」という主観的な基準を優先し、声の大きい社員を優遇するという悪循環を生んでいる。

 さらに深刻なのは、人事評価が経営層の恣意や主観に支配され、それが絶対的な正解として固定化される点である。たとえ現場の管理職が部下を正しく評価しようと努めても、社長や役員の一言で査定が容易に覆されるようでは、管理職の現場に対する押さえは効かなくなる。労働組合や異議申し立ての機関を持たない組織において、人事評価の基準は極めて曖昧になりやすく、そこには「上層部の意向を汲み取る」という暗黙の同調圧力が支配する。
 こうなると非管理職からは「上層部にさえ気に入られればいい」と管理職が軽んじられるようになり、組織の規律は崩壊する。近年の深刻な人手不足も、この状況を悪化させている。若手の離職率が高く「ただ在籍しているだけ」で管理職になれる現状では、会社側が離職を恐れて特定の社員に過度な譲歩を繰り返し、結果として労使の緊張感が逆転してしまうのである。

 こうした歪んだ組織において、部下を真剣に手厚く指導しようとする「正しい上司」は、異分子として同調圧力の標的になり、社内で浮いた存在になりやすい。逆に、部下を放置し自らの権利ばかりを主張する上司が多数派として発言力を強める逆転現象すら起きている。間違った振る舞いをする人間が淘汰されないという自浄作用の欠如こそ、中小企業の致命的な弱点と言わざるを得ない。
 チームプレーを軽視し、自分の論理をごり押しする者が利を得る陰で、コツコツと地道に働く「正直者」が踏み台にされ、疲弊していく。管理職は、今一度自らに問い直すべきだ。自分は「外の世界」の物差しを失い、組織の歪なバイアスに加担していないか。誠実な部下を「声の大きい部下」の犠牲にしていないか。「井の中の蛙」であることを自覚し、その井戸を覆う同調圧力から抜け出す勇気を持たない限り、組織の再生はあり得ない。

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