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週刊Neue Fahne

2015年08月24日号

管理職は部下の退職を恐れてはならない

 人材の流動化が叫ばれて久しい。しかし、現実問題として「優秀な社員」は思い通りに採用できない。自社にとって「優秀な人材」は他社にとっても当然のことながら優秀なはずであり、この種の人材が労働市場に溢れているはずもない。
 ところで、管理職にとって直属の部下の中から退職者を出すのは、気持ちのよいものではない。何故ならば管理職の指導上の資質が問われると思われるからだ。このため、往々にして管理職の中には、「退職されては困る」という気持ちが先行し、必要以上に部下に気を使う傾向がある。

 同時に管理職には部下から“嫌われたくない”という心理も働く。とりわけ、評価制度の中に「部下からの評価」(360度評価)制度を導入している企業などの場合には、管理職が必要以上に部下に“おもねる”ケースもある。このため、本来は部下に指示しなければならない業務を自分でやってしまう管理職もいる。この種の管理職の方便は「自分がやった方が早く正確だから…」というものだ。
 管理職がさまざまな理由で正当化しようとも部下への“おもねり”は、裏を返せば部下への関心を欠いた指導放棄でもある。何故ならば、部下に対してハレ物にさわるような扱いでは、部下に適切な業務を割り振ることもできず、一定の無理を強いることで達成意欲を醸成させることもできないからだ。

 管理職が部下の退職を恐れ適時適切な指導を怠るならば、結果的に部下の退職を早めることになる。しかも「優秀な部下」から先に辞めていく可能性が高い。これは、部下の側が適切な指導をしない管理職の力量を見限るからである。仮に部下からの辞表に対して管理職が「寝耳に水」となるのであれば、それはいかに部下に関心を持っていないかという証拠である。この関心のなさが部下の退職の決意につながっていることもある。
 一方で、管理職は“部下へのおもねり”を利用する部下の存在も忘れてはならない。この種の部下は、適時適切な指導ができない管理職の力量不足を幸いにして現状にあぐらをかく強かな側面を持っている。

 管理職は部下に対する指導が原因で辞めるのなら、「仕方がない」との割り切りが必要である。管理職が部下の退職を恐れて部下指導を怠るのは本末転倒である。ただし、ここでいう指導とは決して情意に基づいた恣意的なものであってはならない。余談ながらこの種の指導は必ずハラスメントにつながる危険性がある。
 管理職は部下から辞表が提出された場合に“部下の辞表を慰留する”ことではなく、辞表が出されるに至る経緯の中で自らの指導性と力量を反芻することである。これまでは多くの企業では、人材を定着させていくことに主眼が置かれてきた。
 管理職は自らの指導性の発揮が問われていることを自覚しなければならない。自らの信念ある言動と行動で退職者が出ることを恐れてはならない。むしろ、恐れるべきことは、主導的な働きかけを怠った場合の組織ぶら下がり人材の増殖である。

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