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週刊Neue Fahne

2021年02月08日号

ジョブ型雇用を踏まえた働き方 -19- 上司からの指導を過度に期待しない

ここ数年、入社して間もない若手社員の離職が増加しているといわれている。このためか人材流出を防止する目的としたリテンションマネジメントを重視する企業も増えている。もっともこの施策の中身は「休日を取りやすくする」「残業をさせない」「風通しを良くする」などの職場環境の整備や「社員の希望を重視した配置」「副業やリモートワークの容認」など柔軟な働き方の選択肢を用意するなどというものだ。
  一方で「上司が何も指導してくれない」という理由だけで、早期退職する若手社員も存在している。逆に「上司が誤りを指摘する」という当然の指導を「叱責された」と捉える傾向も増加している。ジョブ型雇用において従業員の側には「会社や上司が〇〇してくれない…」という口実が通用しなくなる。企業の側にとっては職務能力を備えた人材を採用するため、主に人材の教育・訓練にかけるコストの総体が結果的に減少することになる。

  ジョブ型雇用では管理職の部下との接し方も変化させなければならない。今日でも事あるごとに部下の仕事ぶりに対していちいち口を出す管理職が存在する。こうした管理職は口を出すことが「自分の仕事だ」と勘違いし、部下や若手社員の可能性の芽を摘み取ってしまう危険性すらあることに気づいていない。本来の管理職の仕事とは、可能な限り実務は部下に任せ、誤りや不足している部分を補う「支援者」との振る舞いに徹することだ。
  部下の仕事の欠点を管理職が補うのではなく、助言をして本人に問題点を考えさせ、本人に自覚させていくのが仕事だ。部下の側が自分の頭で考えずに、上司からの指示を待ち、教えられることだけを期待してしまう姿勢を取り続けことを放置していては、管理職の側もマネジメント能力を高めていくことができないという悪循環に陥る。

  従業員にとって単に上からの指示や命令された事柄をこなしているだけでは、仕事が「面白い」はずもない。仮に最初から最後まで任された仕事の達成に向けて自分の頭で考えて取り組んだならば、結果として不十分な成果しか得られないとしても、自分自身の蓄積になる。上司や先輩から手取り足取りの指導を期待していては、顔色をうかがったり頼ったりする「癖」が自分についてしまう。さらには自分で仕事の成果をあげるための創意工夫すらしなくなり成長も望めない。
  ジョブ型雇用において管理職は「可能な限り部下が自分で気づき、自分で解決策を見出せるように仕向ける」というマネジメントの基本に立ち返る必要がある。同時に従業員の側が自分自身で仕事の面白さや達成感を味わう機会を増やしたいのであれば、上司から1から10まで懇切丁寧に教えを請うことを恥じる必要がある。常に教わる側に終始するならば「頼りにならない存在」と位置づけられることになる。

企業組織では今後とも内部労働市場に「余剰人材」を抱えている余裕はない。採用段階でも「将来的に会社を背負う」と思われる人材を厳選しなければならなくなる。ジョブ型雇用が浸透する過程は、従来の新卒一括採用も意味をなさなくなってくる。企業組織で働く者にとっては、手取り足取りの指導されないことは「頼られている存在」か「見放された存在」のいずれかに区分されることを自覚しなければならない。
仕事上の能力形成は、単純な定型業務の過不足のない遂行でなされるわけではない。もちろん職務を離れたところでの読書や見聞による知識だけをつけても所詮は机上論になる。自らの職務能力の形成においては、上司や企業からの手取り足とりの指導を過度に期待することなく、「任される責任」を自覚し結果にこだわる姿勢を堅持しなければならない。

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