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週刊Neue Fahne

2021年07月19日号

テレワーク下でも普遍のマネジメント姿勢 -17- 従来の雇用システムを自ら疑う

2021年入社の新入社員の特長は「仲間が恋しい ソロキャンプタイフ」(産労総合研究所)とのことらしい。要はコロナ禍によりオンラインで繋がっていたが、不安・孤独な就職活動を強いられた。まるで初めてのキャンプを一人で行うように最初はまごついた。しかし、次第に気持ちを切り替え、工夫するたくましさがある。一方、仲間への恋しさも募っているということでネーミングされたとのことだ。
  時代状況の変遷によって若者の意識状況は変化する。こうした新人に対して配属先で毎年のように繰り返されるステレオタイプの「最近の若手は…」という評価を繰り返していては、あまりに新入社員が可愛そうというものだ。新入社員の受入れ側が時代状況の変遷を理解できなければ、意識の溝が拡大するばかりだ。一方で他の先進諸国の若者と比較した調査などでは、日本の若者は自己肯定感が低いといわれている。

  内閣府が2018年に行った調査によれば「日本の若者は、諸外国の若者と比べて、自分自身に満足していたり、自分に長所があると感じていたりする者の割合が最も低く、また、自分に長所があると感じている者の割合は2013年の調査時より低下していた」とのことだ。また、自分が役に立たないと強く感じている者ほど自分自身に満足している者の割合が低く、この関係は諸外国の若者の意識には認められないらしい。つまり、自己有用感も低いということになる。
  自己有用感とは、自分の属する集団の中で、自分がどれだけ大切な存在であるかということを自分自身で認識することができるということだ。この自己認知が低ければ、一般的には「過去の失敗へのこだわりがトラウマになりやすく、ともすると他人との比較や劣等感の意識が強くなる」といわれている。そして、自分には「できない」との思いが先行してしまい、結果的に周囲に依存しがちになるといわれている。年長者から見れば「甘えている」と映ることになる。

  自己肯定感や自己有用感の高低は、当然のことながら個人によってあらわれ方は異なるだろう。問題はビジネス現場において果たしてこうした傾向が、今日の若者の特長に限定することができるのかということだ。直裁にいえばこの種の傾向は、今日のビジネス現場において世代を超えて見られる傾向である。そして終身的な雇用制度と年功賃金制度に規定されてきた日本の雇用システムがこの種の傾向を助長させてきた。何故ならば企業組織の構成員にある種の「居心地の良さ」を与えることになってきたからだ。
  日本の雇用システムは、長期的勤続を通して職務能力が形成されるということを前提にしてきた。このため、極端にいえば「真っ新」な新人を採用して企業組織に帰属意識を持たせながら時間をかけて徐々に選別を繰り返すということになる。このため企業は組織に属すことになった新人に対して極めて面倒見良く接してきた。新人の側も仮に長期的な選別の過程で振るい落されたとしても退職する必要もなく、居たいと思えば基本的には定年まで組織に居残ることもできた。

  長期的な選別過程の各段階で振るい落とされた者の中には、就労意欲をなくして単に組織に属していることだけを自己目的とする者もあらわれる。こうした者の多くが今日では社内労働市場に滞留してしまっている。現象的には「ぶら下がり思考」である。これは乱暴にいえば日本の雇用システムの宿痾でもある。
  仮に振るいに落とされたとしても社歴の長い従業員には「居心地の良さ」が助長される。逆に社歴の短い従業員のモチベーションを低下させることにもなる。こうした関係の下では年長者と同一の職務能力を有する社歴の短い従業員は、さっさと転職してしまう。あるいは最初から年長者に自分の将来を透視し「いわれた事しかしない」=「指示依存」という態度に終始する。管理職が若手社員と接する場合の前提として、先ずはこれまでの日本の雇用システムの是非を疑う姿勢を自らが前面に出していく必要がある。さもなければ、「いわれた事しかしない」部下を増殖させるだけである。

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