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週刊Neue Fahne

2022年08月29日号

現場マネジメントが担う部下育成課題 -3- 新種「ぶら下がり」思考の排除

企業組織での働きは基本的に役割が明確に決まっている。部下に対して現場マネジメントを担う者は、自部門・自部署が組織内で果たしている役割を明確に理解させなければならない。しかし、業務においては往々にして、自分の担当範囲(境界)を越境して仕事が依頼されることがある。つまり、日常的な業務行動では自らの業務(守備範囲)と他部署との境界線が曖昧な業務が度々発生するものである。
  このような時に「それは自分の担当ではありません」「自分の所管する業務ではありません」と依頼を拒否することは可能である。何故ならば企業組織は機能体として役割分担で構成されているからである。現場マネジメントの担当者にとって、日常的な業務行動での境界線で発生する曖昧な業務に対して、部下にどのようなスタンスで臨ませるのかという問題は厄介なことでもある。

  現場マネジメントの担当者には部下に“自分の担当や役割範囲をしっかりと守り、責任を持たせる”という指導が求められる。一方で日々に発生する“曖昧な境界線”を意識させない指導を行ったならば、部下は周囲から「協調性がない」、あるいは「自分本位でしか仕事をしてない」という誹りを受ける可能性もある。同時に組織全体との協働という観点に立てば自己の役割範囲に固執することは、同僚や他の部門の動きへの関心を削ぐことになる。
  協働とはつまるところ「貢献意欲」の発揮である。自分の守備範囲内のことばかりに集中し、全体を俯瞰しない働き方は組織内で通用しない。この種の業務姿勢が高じてくるならば、自分の分担をこなすことだけに満足し「担当した仕事さえ確実にこなせばよい」という意識に陥ることは自明である。

  こうした意識は形を変えた新種の「ぶら下がり意識」のあらわれである。一般的にいえば企業内で「専門性の高い職務を担っている」と思っている者ほどこうした考えに陥りがちである。「自分の担当は○○を専門としている。社内の他の業務に従事している社員とは違う。役割をちゃんと果たしているのだから、あとは関係ない…」という思考である。とりわけ、昨今の“ジョブ型雇用論議”の広がりは、この種の風潮を助長させている可能性もある。ただし、こうした考え方に基づくならば、何も企業という組織に属す必要はない。
  むしろ個人事業主として企業との間で「業務委託契約」による働き方に徹すれば良い。そして、これは否定されるものでもない。仮にこの種の思考をする者が部下の中にいたならば、積極的に“専門性に依拠して自らが独立を選択する道がある”ことを促していく必要がある。同時に企業という組織に属しながら、「専門性の高い仕事に従事している」という口実で、組織全体への目配りをしないのであれば、それは企業組織への新種の「ぶら下がり」に等しいことも明確に指摘していかなければならない。

  企業組織では、一人ひとりに与えられた役割が決まっていたとしても「自分の仕事は組織全体の一部分を構成している」という意識が必要となる。もっぱら自らの業務にのみ固執しつつ、自ら独立する方法を選択しないのであれば、それは明らかに「ぶら下がり」に過ぎない。たとえ自分の仕事や所属する部門が順調であったとしても、全体との調和が取れていなければ単なる部門最適に過ぎない。企業組織においてはさまざまな業務が相互の関連性を保持しながら「組織目標」の達成向けた協働が求められる。
  企業組織では「どこかに問題点や課題があるのか」、そして改善に向けて「自分の立場で出来ることは何か」を考えて行動するという組織的な働きが常に求められる。緊急事態においては必要に応じて自分の担当の仕事とのバランスをとりながら他部門・部署で発生している問題の解決に向けた支援に徹する必要もある。企業の組織の一員としての働きとは、組織全体として最適性を常に意識することである。組織全体の中で醸し出される協働に自らの役割範囲を位置づけてこそ「ぶら下がり」とは反対の「組織を支える働き方」となる。

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