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週刊Neue Fahne

2022年09月05日号

現場マネジメントが担う部下育成課題 -4-「馴れ合い」を排した議論の保障

今もって職場には「日本書紀」に記述のある「十七条憲法」の第1条「和をもって貴しと為す」という価値観が重視される風潮がある。つまり、「何事をやるにも,みんなが仲良くやり,いさかいを起こさないことが良いということ」というものだ。いささか穿った見方になるが、この精神風土がいわゆる「メンバーシップ型雇用」と結びつくことで、職場に妙な同調圧力が働いているとも見ることができる。
  この同調圧力が蔓延る組織にあっては、「突出」することなくことさらチームワークや協調性を重視する資質が良いとされるからだ。つまり、組織内において自分の内心はどうであれ意見の違う人たちと波風を立てずに妥協し、調和したふりをすることが美徳でもあるものだ。これらは明らかに多様性に目を瞑ることにほかならない。現場マネジメントではこの種の精神風土からの脱却が不可欠となる。

  日本書紀の解釈などは学者の世界に譲るとして、少なくとも「和をもって貴しと為す」とは“自分自身としては相手の発言や決定に対して不満があるが、全体調和のために安直に妥協を繰り返す”という意味ではないはずだ。つまり“わだかまりなく相互に議論する”という意味で捉える必要がある。ビジネスシーンにおいては、己を過度に抑制することなく不平不満があれば正直、かつ公明正大に意見をぶつけ合うということが前提でなければならない。職場では組織の方向性を巡ってメンバー同士の意見が鋭く衝突することが往々に発生するものである。
  むしろ組織内での意見の対立が存在しない組織こそ停滞を意味することになる。現場責任者はメンバー同士の意見が錯綜し、口角泡を飛ばすように白熱した議論を恐れてはならない。むしろ多いに奨励すべきである。決して議論にストップをかけ、両者の意見を足して2で割って収拾しようとしたりする態度をとってはならない。意見の衝突に対して議論を深めようとせずに、安易に議論を収束させようとする行動をとってはならない。何よりも多数決をとって議論を収束させようとするなどは愚の骨頂である。

  組織内で交わされる議論は決して私怨なものではないことが前提である。この前提に下での議論を制止し決定を急ごうとする行為は、結果的に組織を構成するメンバーの建設的な意見やアイデアを押し込め、組織の活性化を阻害することになる。さらにいえば正直に意見をぶつけ合うことを避け、「事なかれ主義」をはびこらせる元凶にさえなるものだ。
  日本経済が全体として右肩あがりの拡大基調にあり、個々の企業がそれなりに成長してきた時代は、こうした妥協の産物の繰り返しでも組織は維持することができた。しかし、変化スピードが激しい時代では、組織内で単純に「互いの歩み寄り」を繰り返すことは、決してコンセンサスを意味せず「無責任」な行為である。

  今日では「今まで通り」が通用しない時代である。一つの判断を誤れば、企業組織が傾く時代であり、一つのアイデアが急成長を促したりする時代である。しかも成長も安定的ではなく常に不連続である。従って、シビアな組織判断が求められているときに、「まあまあ」と馴れ合いでものごとを決めていたならば、必ず組織は機能不全に陥る。
  自分自身の働きにおいても同様だ。上司や先輩、同僚と意見が対立する場面があったら、徹底的に議論を戦わせ安易に妥協の道をとるべきではない。もちろん、議論の目的はより良き方向を見出していくためであり、勝ち負けの勝負事ではない。何事も「馴れ合い」で終わらさず、緊張感を持った周囲との接し方が相互に尊重の気持ちを生み出し連帯感につながる。現場責任者は安易な「馴れ合い」を排して組織内における健全で建設的な徹底した議論を保障していかなければならない。

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