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週刊Neue Fahne

2023年06月05日号

マネジメント行動の再検証-4-若手世代の離職を嘆く前に自らの姿勢の見直し

仕事を通じて自分自身の可能性を見出すためには、最初から自分に合った仕事があるわけではないと認識することだ。“自分の天職を求める”などはあまり意味のあることではない。今日では職業選択の自由や選択肢が多いことが逆に過度にモチベーションが云々される。自分に合った仕事などと発想する以前に考えるべきことは、「今、自分が何をしたいのか」「何をすることができるのか」「何をしなければならないのか」を考えることが先決である。
 自分に課せられた仕事を一所懸命にやり続けることで、自分自身の可能性も発見できる。とりわけ企業組織での仕事は常に順調ではない。壁にぶつかったとしても、無理をして「乗り越える」等の発想をする必要もない。ただし、逃げずにその場にとどまり仕事に取り組むことで自分自身の可能性を蓄積することもできる。

 企業組織での働きではこれまで仕事への取り組み姿勢と組織への忠誠心があたかも同列であるかのように扱われてきた。しかし、仕事の意義・価値は自らが見出すものであり、忠誠心などではない。かつて日本企業では従業員の「忠誠心」の高さが強みであるかのようにいわれた時代があった。しかし、これは社会全体が成長軌道にあった時代にのみ通用したことであり、もはやこのような幻影にすがることはできない。企業組織への忠誠心などは今日では「組織ぶら下がり」と同意語でさえある。
 組織に属して働く場合には、もちろんその組織の規範、ルールに従わなければならない。何故ならば組織は「共通の目的」の下に集まった個々人の集合体であるからだ。そしてこの集合体に属している個々人は互いに協働という貢献意欲によって結びついていなければならない。しかし、あくまでも個々人の意思で結びついているのである。仮に自らが「自分が属すべき組織ではない」と判断したならば、忸怩たる思いを抱きながら組織に居残る必要はない。さっさと去ればよいだけのである。

 人はそれぞれの人生観やライフスタイルに応じて仕事を選ぶものだ。その一つとして選択するのが企業組織での働きだ。つまり、仕事においては一人ひとりが主役なのである。従って職場の管理職が部下の意欲を高め、成長を促すには、もはや「会社のために頑張ろう!」というフレーズは全く通用しない。自分のためになれば頑張るし、メリットが小さければ頑張るはずがない。今日の若手・新人世代は、このような価値観、人生観、仕事観が定着している。こうした世代に向かって管理職が自身のこれまでの企業組織での働き方で得た価値観などを対置したところで全く意味がない。
 管理職が若手世代と接する立場に考えるべきことは、先ず自分がこれまでの企業組織での働きで得てきた価値観を相対化することである。そのうえで若手世代が組織で働く環境を整備することである。「組織から離れたい」と考える者がいたならば、引き留める必要はない。極論をいえば「組織から離れたい」と考えるのは、その組織において貢献意欲をなくしているということである。

 若手世代が企業組織から離脱することは、その組織での仕事を通して自らの存在価値を見出すことができないと判断したからに過ぎない。逆にいえばそれが実感できるのであれば組織に留まるはずである。仕事を通して自らの存在価値を示すことは単に企業組織に属すという選択肢だけではなく、独立起業人として働くという選択肢もある。どれを選択するのかは個々人の判断である。
 今日の日本企業においては未だに「折角採用した新人がすぐに離職してしまう」と嘆く傾向がある。とりわけ企業組織への忠誠があたかも仕事の一部であるかのように錯覚し、受動的な働きに終始してきた者の中にこの傾向が強い。しかし、若手の離職を嘆く前に反芻すべきことは、属している企業組織の属性ではなく、自分が行っている仕事や働きに対して自信を持っているか否かである。仮に自信がないのであれば若手世代からすぐに見透かされることになる。何故ならば誰しも自信を持って自らの仕事に向き合っていない者と一緒に仕事などしたくはない。

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