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週刊Neue Fahne

2023年09月11日号

マネジメント行動の再検証-14-一人ひとりが自らの「逃げ道」を断つ

必ずしも努力が実る(報われる)とは限らない。しかし、自らの意思で挑戦することが成果の前提であることに変わりはない。挑戦しない姿勢とは“失敗を恐れている”ことの裏返しでもある。また、失敗に対する恐れは過度に周囲を気にする自己肯定の低さでもある。このため常に無意識のうちに「逃げ道」をつくることになる。
  企業組織における仕事において「逃げ道」はいくらでも存在している。何故ならば組織で行う仕事は当然ながら対人関係を伴うものであり「社会的手抜き」もできれば、他者に責任を転化することが容易であるからだ。企業組織内の比較的若い世代であれば、この種の「逃げ」はまだ許されるかもしれない。しかし、一定の年齢に達した者が依然として自らに「逃げ道」を設けているならば、組織内での信頼性が薄れるばかりではなく排斥の対象となる。

  失敗を恐れて常に「逃げ道」を用意した働き方は、物事に「安住」してしまうということでもある。物事への「安住」に慣れてしまうならば、何時しかその感覚から抜けられなくなる。日本の企業組織での働きにおいて、一人ひとりが世代を超えてこの物事への「安住する意識」との戦いがシビアに問われている。ビジネスの世界においては、今まで以上にあらゆる場面でのスピードが要求されている。物事に対して「安住する意識」はスピード感覚と正反対の代物である。
 今日の企業組織ではスピードを速めるため、細かいことまでいちいちトップの判断を仰ぐのではなく、可能な限り現場に近いところへの権限委譲が進み始めている。これは素早く顧客の要望や市場の変化に対応できるようにしなければならないからである。ただし、権限移譲は一人ひとりが自らの属する組織の目的・目標に沿って「自主的に判断し、行動する」ということが大前提とならなければならない。

  企業組織において当然のことながら上司には、部下に対して自主的・自律的に仕事に取り組む姿勢を植えつけるマネジメントが要求されることになる。組織内で人が自主的に働くためには、まず組織に所属している一人ひとりが組織の存在理由・目的を理解していなければならない。現在のように変化が激しく、先行きが不透明な時代には上司が組織の方向性を明確にしていなければ、部下は身動きのとりようがなくなってしまう。
 上司が部下に示すべき組織の方向性は、経営理念やビジョンへの日常的な立ち返りによって収斂させていかなければならない。併せて、そのときどきの経営環境を取り巻く内因と外因や当面する組織状況を踏まえた解決課題や達成課題を部下と共に思考し、組織としての最適解を模索していく訓練をしていなければならない。これは、部下に参画意欲を醸成させていくことでもある。

 常に「逃げ道」を用意した働き方は“自分は何のために働いているのか”ということをあいまいにしたまま仕事に取り組むことである。このような働き方では、生産性は向上しないし、自主的に動くことなどできない。自分が行っている仕事の意味と組織全体における役割、そして社会的意義が有機的に結合しなければ、自らの意思で目的などを定めることもできない。
 自らの仕事を自主的に取り組む姿勢を保証していくのが“失敗を恐れない”という組織風土である。自らの意思で失敗を恐れずに積極的に“リスクテイクする”行動が取れるということは、仮に失敗をしたならば、その原因を自ら内省的に究明し、同じ失敗の結果を生み出す行動を戒める思考ができることを意味している。反対に失敗を恐れ、挑戦することを避けようとする姿勢は、仕事を「他人事」として捉えることであり、これからの企業組織では通用しない。

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