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週刊Neue Fahne

2024年01月15日号

人口オーナス(負担)期の日本社会-1-「団塊世代の2025年問題」

 2024年は「能登半島地震」と日航機と海上保安庁機の「衝突事故」で明けた。先ずもってそれぞれの犠牲者のご冥福をお祈りする。
さて、能登半島地域で被災した方々への支援の遅れと対照的に思える地震翌日からの株価上昇が一体何を示しているのか?「バブル期以来33年11カ月ぶり…」などの盛んな報道が空虚に思えてならない。“なぜ?地震後も株価の上昇が続くのか”について諸説があるだろう。残念ながらそれを論じるだけの知見を有していない。ともあれ被災地の状況や孤立地域への支援の滞りなどの報道を見るにつけ、現代における如何ともしがたい“都鄙の矛盾”を感じてしまう。
  一方で日航機と海保機の衝突事故については、奇跡的とも思える“日航機乗客・乗員の無事脱出への賞賛”と“なぜ海保機が滑走路進入したのかとの疑念”の対比による報道が当初なされていた。最近でこそこの種の報道は影を潜めているが、事故発生当初は「事故原因の究明」ではなく、どこかの企業の不祥事に対する対処と同じように“どちらの側に非があったのか?”という類の「事故の責任者探し」が先行した感が否めない。

  世界に目を転ずるならば2022年からのロシアによるウクライナ侵略や2023年のパレスチナ・イスラエル問題等も単純化すれば1991年の「冷戦」終結後のグローバル化から“新たな二極化”の始まりと捉えることもできる。今日の時代を後世は「第二戦間期」と位置づけるのかもしれない。日本はこれまで経済合理性を追求することでの成長を模索し享受してきたが、時代変化の只中では地政学リスクに対する対処が迫られてくる。ともあれ変動性・不確実性・複雑性・曖昧性の渦巻く「VUCAの時代」の渦中にあることだけは確かだ。
  日本国内における時代変化への対処に関しては、コンピュータ本体をはじめシステムやソフトなどが一斉に不調になるといわれた「2000年問題」以降、ほぼ毎年のようにさまざまな「○○の20XX年問題」が語られている。今年は物流業や建設業の「2024年問題」への危惧と対処が語られているが、今後とも認知度はともかくとして、さまざまな「20XX年問題」が“斯々然々”と語られることだろう。

  これら日本国内の「20XX年問題」は、1945年以降に極めて上手に機能してきた戦後日本の政治経済そして社会諸制度の歪みが噴出している証左とも受け取れる。来年に控えている「20XX年問題」は2022年から75歳の後期高齢者に達し始めていた「団塊世代」(戦後ベビーブーム世代)のすべてが、後期高齢者に到達する「団塊世代の2025年問題」だ。
  これは日本の人口の約800万人といわれる「団塊世代」(1947〜1949年生まれ)が後期高齢者になることで、2025年には75歳以上の後期高齢者が人口全体の18%を占めることで起こる諸問題の総称でもある。大きな問題は高齢者の生活状況、意識・価値観の層多様化を踏まえ、多様な高齢者のニーズに応え得る医療・介護・福祉サービスの構築だろう。

 戦後日本の経済社会の発展はこの「団塊世代」といわれる人口によって支えられてきた。つまりこの世代は、1950年代中期からの高度経済成長期からバブル期までの「人口ボーナス期」の豊富な労働力の担い手として経済の発展に寄与してきた。人口ボーナスは、高齢者が少なく医療や制度が充実していない時期におこる。しかし、経済成長に伴う医療や年金制度の充実により、高齢化社会へとなり人口ボーナス期は終了するといわれている。日本においても高齢者の増加や生産年齢人口の低下により、一人当たりの経済的な負担が増加し始めた段階で安心して子育てができる環境整備が不十分であったため、一層に少子高齢化が加速し人口オーナス(負担)期に移行してきた。
  一度人口ボーナス期が終わると再び人口ボーナス期が訪れることはなく、人口オーナス期が続くことになるといわれている。直截にいえば日本の雇用制度も人口ボーナス期に形成され人口オーナス期への対応が未整備である。同時に雇用制度に規定されている個別企業の従業員対応もしかりである。そして何よりも企業に働く一人ひとり就労意識が人口ボーナス期からの脱却がなされていない。これから訪れる「団塊世代の2025年問題」を単に高齢者問題と矮小化して捉えることなく、人口ボーナス期に形成された就労意識と如何に決別していくかという課題として捉えていく必要がある。

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