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週刊Neue Fahne

2024年03月25日号

人口オーナス(負担)期の日本社会-5-管理職層の存在意義が問われる時代

 日本は人口オーナスの度合いが国際的にみて際立って大きい。高齢化のスピードも速く、人口オーナスの超先進国だ。人口ボーナスは一度しか訪れず、日本はオーナスが進むばかりである。そこで多くの企業では人材の確保が急務となっている。また、人材確保と同時並行で若手人材の早期離職防止が焦眉の課題になっている。
 人口オーナス期の日本では、新卒・中途に限らず採用した若手人材の定着と育成に対しての投資をこれまで以上に強化していかなければならない。しかし、いくら投資を行うにしても若手人材の教育・訓練を行う主体は管理職層である。この管理職層に自覚と技能がなければ、若手人材からその力量が見破られてしまう。この意味で若手人材の育成とは管理職層の力量向上の課題と同時に語られなければ意味がない。

  若手人材と向き合うにあたり管理職層が自覚しなければならないことがある。それは、これまで自らに施されてきた育成スタイルが今日の若手人材には、全く通用しないという現実である。何よりも自分がこれまで見よう見真似で蓄積してきた経験など、若手人材には通用しないということでもある。管理職層にとっては若手人材の生育履歴を考慮することなく、自らの経験で蓄積された知識に即して対応をすることの方が楽でありコストもかからない。しかし、偏狭な経験主義に基づいた手法ほど危険なものはない。
  若手人材は会社という組織を“自分の直属上司”の行動や言動に体現されたものとして位置づける。つまり、直属の上司がどのような思考をしているのか?どのような行動や立ち振る舞いをしているのか?上司がどのような言葉を使っているのか?などを通して会社組織を判断するものである。そして上司が目標としているものは何か?を観て自らの将来をイメージするものである。若手人材にとって会社とはすなわち自分の目の前にいる管理職層に投影されたものと認識する。しかし、管理職層の側はこうした若手人材の認識に対してあまりに無頓着である。

 管理職層が若手人材と向き合う場合には、自らの果たす役割と機能を明確に意識していなければならない。日常業務での多忙を理由に職場状況や若手人材の状況や行動把握(観察)を怠っているならば、組織の健全な機能は失われ、結果的に個々人がバラバラな動きに終始することになる。
  状況や行動把握(観察)とは若手人材の行動に興味と関心を抱くということでもある。この行為を怠るならば、目標・課題が不明確となり組織活動が停滞し始め、権威(組織や上司)への不信感と消極的抵抗(サボリ)が蔓延し、組織性が弛緩し始めることにもなる。その行き着く先にはガバナンス(統治)の崩壊が待っている。

  人間はそもそも「効果にメリットのある行動」を選択するものである。このため、面倒なことはやらないし、楽にできることを選択して、手っ取り早く済むところから始めて、人目がないところで手抜きをする。これは人間行動に起因しているため単純な意識喚起などで変わるものではない。職場ガバナンスの崩壊はある日突然に起こるわけでもなければ、個々人の悪意ある行動より意識的に起こるのは極めて稀である。
  ガバナンスの崩壊は多くの場合に現場の管理職層が状況観察を怠り、悪しき傾向のあらわれを無頓着に見逃すことから始まる。些細なルール違反などのあらわれを放置しているならば、必ず組織の悪しき規範となることが必定であり、結果的に「悪しき企業文化」を形成することになる。これを防止していくために管理職層は、部下やメンバーから“嫌われたくない”という心理を払拭する胆力が必要となる。さもなければ管理職層の存在意義がない。

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