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週刊Neue Fahne

2024年04月22日号

若手社員に真摯に向き合う-3-薄っぺらな精神論などで人は成長しない

 今年も新入社員が現場に配属されてくる。いつの時代もこの時期になると「世代論」が喧しい。一昔も二昔も前には「今年の新入社員は〇〇型」などと一括りで論じるのが流行っていた。最近ではもっぱら「Z世代論」が中心になっている。もっとも、いまだに「○○型」との型ハメも行われている。これによれば今年の新入社員は「セレクト上手な新NISAタイプ」とのことだ。
 その意味するところは新社会人が流行りの「新NISA」と同様に自分なりに進むべき道を上手に「セレクト(選択)」するからだとのことだ。マネジメント視点に立つならば若手新人を「○○型」と型ハメして悦に入っている場合ではない。現実に職場に配属されてくる新入社員に対してどのように対処していくのかは、現場を司る管理職層や上司にとって切実な問題である。とりわけ、一昔前の「三日、三週間、三ヶ月」のど時間軸でもなく、入社早々に「退職代行業者」経由で退職をする者が増えている現状ではなおさらだろう。

 マスコミは最近の新入社員の素行に対して、極めて面白おかしく論じる。それは取り上げられる新入社員の素行について“あるある”と同調し留飲を下げている既存社員(とりわけ40代後半から50歳前後)がいるからに他ならない。こうした既存社員の心理は多少の皮肉を込めていうならば、新入社員の素行にある種の羨ましさやシンパシーを感じる裏返しなのかもしれない。何故ならばこの種の既存社員が新入社員に対して、「自分は理不尽なことがあったとしても耐えてきた…。それに比べて最近の新入社員は…」とのある種のルサンチマン的感情を抱いているともとれるからだ。
 確かに現時点で40代後半から50歳前後の既存社員にしてみれば、いわゆる就職氷河期を経験してきた。しかも“会社に残って敷かれたレールを歩き続ければ、一応は年功序列で相応に地位や給与も上がっていくはずである”と思えた最後の世代でもある。そして職場生活の過程で退職金制度が存在する企業においては“退職金を得て老後生活を描ける”などという幻影がまだ残っていた時代でもある。

 今やこんな生涯設計が描くことはできない。しかし、40代後半から50歳前後の既存社員は、こうした意識から簡単に脱却できるわけもない。そこで、勢い新人社員の素行に対して「自分の若いころは…」という意識を対置させることで、精一杯「留飲を下げている」といってしまえばいい過ぎだろうか。しかも巷には転職サイトが氾濫し、若い世代であれば誰でも、何時でも、好きな時に転職が可能であるかのような風潮が蔓延しているからなおさらだ。
 最もこれとて大いなる幻想に過ぎないのだが、少なくとも人手不足が喧伝される今日では、40代後半から50歳前後の世代と比較するならば若手新人の転職は有利であることは確かである。こうした状況を鑑みるならば、一見して自分よりも自由気ままに振る舞っているように映る新人社員に対して風当たりが強くなるのは当然といえば当然である。

 既存社員なかんずく管理的立場にある者は、若手新人と接する場合に真っ先に“自分の生きてきた社会環境と今日の若手新人が育ってきた社会環境が全く異なっている”という実情を痛苦に認識しなければならない。この違いを認識していなければ単純な精神論に陥ってしまうことは必定である。そもそも精神論などで人が成長するのであれば苦労することはない。
 無自覚な40代後半から50歳前後の世代は、往々にして精神論を振りかざしがちになる。しかし、この精神論は実のところ実利に裏打ちされたものに他ならない。若手新人はこの実利に裏打ちされた薄っぺらな精神論などお見通しである。何故ならば40代後半から50歳前後の世代が新人であった時代は、バブルがはじけて「失われた○○年」がはじまっていたとはいえ、まだまだ成長の余韻が残っていた時代であることを知っているからである。

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