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週刊Neue Fahne

2024年04月15日号

若手社員に真摯に向き合う-2-若手社員を“ディスる”のは天に唾する行為

入社してくる新入社員は概ね2000年以降の生れの若者である。数年前から盛んにマスコミで話題になっている「世代論」でいえば「Z世代」だ。新卒採用を前提にするならば今後しばらくの間は、いわゆる「Z世代」の若者を新入社員として迎え入れることになる。一方でこの世代の指導育成を任せられることになる者の多くは、昭和時代の企業文化(高度経済成長の余韻)に色濃く影響を受けて育てられてきた世代だ。
 この世代を仮に「従来世代」とするならば、この世代にとっては、若手・新人と接するにあたり先ずは自分たちが育てられる過程で染みついた価値観に対する批判的検証が必要となる。ただし、こうした構図は少なくとも一定の沿革を有する規模の大きな企業のものであり、スタートアップ企業や中途採用をメインに行ってきた中小企業には当てはまらない可能性もある。

 昭和時代の価値観とは乱暴にいえば、戦後から高度経済成長に至る過程に形成されてきた有形無形の「成功体験」に基づくものだ。こうした「成功体験」が今日ではこれから求められる一人ひとりの就労意識の足枷になっていることに諭を俟たないだろう。新入社員の動向に限らず今日の就労現場で発生している各種の事柄は、突き詰めるならば旧来の就労観や就労意識と現在進行形で変化している就労観や就労意識との対応や折り合いの付け方との間に発生しているハレーションと捉えることができる。
 職場における就労観や就労意識のハレーションは周囲に大きな悪影響を及ぼし、悪い方向での二次被害や副作用を起こす危険性を持っている。パワーハラスメントに対する捉え方についての齟齬もこのあらわれとも捉えることができる。しかし、これはあくまでも企業組織内部の矛盾であり、決して敵対矛盾ではないと捉える必要がある。従って、ことさらに若手世代と従来世代との間に存在している就労観や就労意識に優劣をつける必要はない。むしろ意図的な対立構造の設定に対しては強い警戒心を持たなければならない。何故ならば組織は「共通の目的」の下に集合した機能体であるからだ。

 就労観や就労意識について世代間に優劣が存在しないという意味は、これまで企業組織で働く意味づけが世代に関わりなく、そもそも曖昧であったということだ。さらにいえば企業内では「従来世代」も依然として組織の中核を形成している「層」であり、若手・新人の指導育成に責任を持たなければならない。問題なのはこの「層」自身が、果たして明確な就労観や就労意識を確立しているのかが疑わしいということでもある。
 面白おかしく喧伝されている今日の若手・新人の諸行に対しての批判的な論調の多くは、あくまでも現象面での違和感レベルに過ぎない。しかも、これまでの経験則との比較をベースにしたものに過ぎず、決して確固たる就労観や就労意識に裏打ちされたものではない。何故ならば就労観や就労意識において、甚だ心許ない従来世代も多く存在しているからだ。もちろん、確固たる就労観や就労意識も抽象的な表現であり正解があるわけでもない。

 従来世代が若手・新人と対処するにあたっては、先ずは自分たちが育てられた時に染みついた価値観の是非から問い直さなければならない。この価値観は60歳ないし65歳の定年退職を迎えれば、相応の退職金を得て退職し年金生活が待っているという生涯設計が描けることで成り立っていた。つまり、何はともあれ企業にしがみつき、敷かれたレールを過不足なく歩き続ければ、自然にキャリアやスキルが形成され年功序列で確実に地位も給与も上がっていく。これを担保していくためには、理不尽なことがあったとしても耐え抜くという価値観であった。
 今日では仮に業績が良い大企業であっても千人単位で大量の早期退職という名の雇用調整がはじまっている。これは旧来からの価値観の前提となるべきものが崩れ去っていることを意味している。この流れをこれまでの生育履歴を通して肌感覚で捉えている若手・新人は、個人の都合より企業の都合を優先させるという思考から「自由」である。従来世代は単に若手・新人の現象面での行動や発言の一つ一つを取り上げて“ディスる”のではなく、旧来の思考から「自由」な存在である若手・新人の価値観と自らのこれまでの価値観を謙虚にすり合わせていく姿勢と覚悟が必要となる。さもなければ「若手を育てる」などと軽々に発するべきではない。ただし、忘れてはならないことは、若手・新人に“阿る行為”は禁物ということだ。

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