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週刊Neue Fahne

2025年06月02日号

“働き方”と“管理職の在り方”に絡む思念-1-就労意識や労働観の“揺らぎ”の行方

経済成長時代に形成された終身雇用や長期勤続を重視する日本型と形容される雇用形態は徐々に変化している。個人の価値観やライフスタイルに合わせた働き方として「仕事だけの人生ではなく、自分の時間や価値を大切にしたい」という就労意識や労働観への変化も始まってきた。この副産物なのか早期の転職や“静かな退職”、そして退職時に「退職代行」を使用することが普通の選択肢としてなってきた。
  もちろん会社という組織に自らを仮託する思考などは、そもそも間違っているが、企業組織の一員としての向き合いや義務感などが希薄となってきた。つまり、自分自身の成長ややりがいを求める価値観が浸透し定着し始め、現職で成長の機会を感じられなければ、早期に退職を決断する傾向も増加している。併せて、産業構造の変化に伴うテクノロジーの進化や社会の変化により多様なキャリアパスが選択肢として広がっている。

  安定性よりも柔軟な働き方やチャレンジングな職場を好む若者を中心にして、組織でのキャリアにこだわらず、自分に合った働き方を模索するようになってきた。この結果、自分のスキルや能力を外部労働市場で試す感覚が強まり始めた。さらには、単純に現状よりも心地よく働ける環境を求めて転職するケースも増えてきた。
  リモートワークやフレックス制度のように個々の生活スタイルに合わせた働き方を望む傾向があり、旧来型の職場環境を敬遠する若者が増えている。特に自己成長や社会貢献への関心が高い若者を中心にして、単に給与や待遇だけでなく、「この仕事で自分は何を学べるのか」「社会や人にどう役立っているか」を重視する傾向も拡大している。

  こうした「働き方」に対する捉え方の多様化の下では、当然のことながら仕事内容にやりがいや成長を感じられなければ、転職を考える意識が増幅するのは当然でもある。加えてこうした動きを加速させている背景には、転職サイトをはじめとするいわゆる「人材ビジネス」の伸張もある。もはや一般的な就労現場においては、「石の上にも三年」などという言葉は死語と化した感さえある。
  まして、テレビでは「転職すべきか否かさえわからない…」という者に対し、キャリア形成という概念さえ度外視した転職を促す求人プラットフォームのCMが溢れている。まるで転職をすることで自動的にキャリアアップができるかの幻想を喧伝しているかのようでもある。SNSを用いて一人ひとりが情報発信することが容易となり、他社や他業界に対する真偽不明の情報が混濁して溢れている。

 こうした流れに対してある種の羨望を感じつつも好々爺的に“危なっかしさ”を感じる旧世代もいれば、若かりし自分の就労状況と比較して的外れなやっかみ的な嫌悪を抱く旧世代もいるのも確かである。ただし、確かなことは戦後日本社会において紆余曲折を経ながら形成され、高度経済成長期を支えてきたと思われていた就労意識や労働観が間違いなく大きな“揺らぎ”が生じていることである。こうした就労意識や労働観に対して流行の「昭和的」という揶揄的な形容詞をつけるならばさしずめ「昭和的就労意識や労働観」となる。
「昭和的就労意識や労働観」の下で日本社会を牽引してきたボリュームゾーンは、既に後期高齢世代に突入している。問題なのはこの世代に直接・間接的に指導や薫陶を受けてきた世代が、その残滓を抱えながらまだ一定の権限を手中にしつつ企業組織の要所に点在していることである。この世代が実のところ新たな就労意識や労働観の構築にとって桎梏となっている。もちろん、これらの世代を一挙的に一掃するに越したことはないが、それほど簡単ではない。しかし、徐々にこの流れが始まっているのは確かである。最近の黒字大企業で始まった大規模な「早期退職」募集や国も音頭を取る外部労働市場の形成もある意味では“一掃”の始まりという文脈で捉えることもできる。

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