
2026年01月05日号
中小・中堅企業に内包する管理職の課題は、「経験主義が横行し、 基礎的訓練が疎かになっている」という一点に集約される。そこには管理職の任を担う個々人の資質や能力の問題というより、企業構造そのものが抱える必然的な歪みと捉える必要がある。構造的な歪みとは以下のような点だ。
第一に、中小・中堅企業では「マネジメントよりプレイングが優先される」という構造が根強く存在している。経営者や管理職自身が主要な稼ぎ手であり、管理に専念する余力がないため、管理行為は最小限に抑えられる。その結果、業務は阿吽の呼吸や口頭指示に依存し、体系的なマネジメントや人材育成は後回しにされる。これは一見すると効率的に見えて、実は組織的な再現性や持続性を著しく損なう要因となっている。
第二に、公私混同に近い人間関係の近さが、管理職育成をさらに困難にしている。とりわけ中小企業においては、「企業組織」が「組織体」としてではなく、「家族」や「部活動」に近い性質として意識される傾向が強い。このため評価や役割分担も感情に左右されやすくなる。
第三に、多能工化の名のもとで実のところ、職務定義が曖昧な環境となり管理職に求められる役割や責任も不明確となる。結果として管理職自身が「何をもって良い管理とするのか」を学ぶ機会を失う。
こうした構造下の中小・中堅企業で管理職に登用される者は、必ずしも能力的に選抜された人材ではない。つまり、中小・中堅企業では大企業と異なり同期や競争相手が少ないということでもある。また、離職率も比較的高いため欠員を中途採用で補ってきたため、企業として計画的に育成された人材は稀有である。要するに「辞めずに残った年長者」が然したる訓練も施されることなく、管理職に登用されるケースが多い。基礎的なマネジメント教育を受けないまま役職に就くことが常態化している下では、部下に対する教育や管理がOJTと個人の経験に委ねられることになる。
結果として指導内容は属人化し、部署ごとのマネジメント品質に大きなばらつきが生じるのは必定でもある。中小企業庁の中小企業白書が繰り返し指摘しているように、多くの中小企業では人材戦略における「育成投資」が依然として低水準にとどまっている。特に管理職層に対する体系的研修は限定的で、「時間がない」「即効性がない」といった理由から後回しにされがちである。結果として、育成はOJT偏重となり、暗黙知の継承に依存する非効率な構造が温存されている。
この管理職層の未形成問題は、企業規模が売上10億〜30億円を超えた段階で一気に顕在化する。経営者一人の号令では組織が動かなくなり、中間管理職による「翻訳能力」、すなわち経営の意図を現場の行動に落とし込む力が不可欠となる。しかし、その役割を担うべき管理職層が育っていないため、組織の壁を越えられず、成長が停滞する。つまり、企業組織の最大のボトルネックが管理を担う人材の「層」の薄さということだ。
今後の労働力の減少はこうした問題を一層深刻化させている。力量の低い管理職の下で若手社員が成長機会を得られず離職するリスクは急増しており、これは単なる人事課題ではなく、倒産リスクに直結する経営課題である。経験主義に依存した管理から脱却し、基礎的なマネジメント訓練を「投資」として捉え直せるかどうかが、中小・中堅企業の将来を左右する分水嶺となっている。
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