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週刊Neue Fahne

2021年10月25日号

高齢者雇用と中高年の再就職 −7− 「年上部下」をマネジメントする力の養成

定年退職後の継続雇用者を単に雇用延長と解釈し、同一部門・部署に配置し続けるならば、結果として若手社員が活躍する場を奪う危険性がある。若手社員にしてみればいくら継続雇用であったとしても職場空間に年齢という上下関係がいつまでも続くことになる。当然ながら若手管理職層にモチベーション低下という弊害が出る恐れもある。
  企業にとって継続雇用は管理職も含め若手社員との関係や本人の体力的な面も考慮した配置等の問題など様々なコスト増加を強いられる。コストとは単に人件費だけの問題ではない。個人差があるにせよ加齢による体力や認知力の低下や衰えは否めない。体力的な面からも通勤途上を含めて各種の災害発生リスクも抱えることになる。総じて継続雇用者に対する対応は、企業にさまざまなコスト増をもたらす。

  定年延長や継続雇用の年齢延長という努力義務は、対象となる従業員にとって必ずしも有利に働くとも限らない。極端にいえば退職前のポジション意識から抜け切れず、職場内で若手社員から「疎まれる存在」となる危険性もある。人間は何歳になっても従前の仕事を過不足なくできると思うものだ。継続雇用者のこの思いが職場でハレーションを起こすことになる。定年制はある一定の年齢に達した従業員に対して「現役を引退する」という外的なきっかけを与えきた。
  定年制は従業員に定年を意識することで「後進に道を譲る」という引退するタイミングの決断や自覚を促す作用を果たしてきた。ところが定年年齢引き上げや継続雇用の年齢延長は、組織の新陳代謝を阻害することにつながる。また、企業内の50代後半の従業員に緊張感なく企業組織に居続けることが可能であるかの幻想をあたえることになる。

  定年退職後の継続雇用者を部下として向き合うことになる現場マネジメント担当者は、「年上部下」への対処でストレスを抱えることにもなる。企業内での年齢構成が今後とも高齢化することは明らかであり、現場でマネジメントを担う者にとっては、自分の部下の中に自分よりも年上が占める割合が増加する。こうした状況で極端にいえば、自分の親世代に対しても部下として接しなければならない。これでは各種ストレスも増すことは明らかだ。
  このストレスは一歩間違えれば「年上部下」への各種ハラスメント行為に発展する危険性もある。経営環境を巡る変化が激しく企業のビジネスモデルの構造変革が迫られる中で、悠長に振る舞う継続雇用者に「年下上司」が歯がゆい思いを抱くのも当然である。これは単にパソコンスキルの不足を腹立たしく思うなどという次元の問題ではない。陰に陽に「先輩風」を吹かすかのように映る継続雇用者の立ち振る舞いに憤りを覚える心理が生まれるのも当然である。

 現場でマネジメントを担う者にも依然として多かれ少なかれ「長幼の序」という思いは存在する。これは決して悪いことではないが、あくまでも本人にマネジメント力が備わっていることが前提である。このマネジメント力とは、年齢に関わりなく自らが役割・責任を背負い、人的資本としての部下を有機的に機能させて組織を運営する能力である。
  継続雇用の年齢延長は当該の本人に対して、「継続雇用での働き方」や「年下上司との関係性」などについての意識づけを定年年齢に達するかなり前から計画的に実施していく必要がある。これは定年を節目にしてキャリアをもう一度転換させるということでもある。それ以上に必要なことは、「年上部下」を持つことになる管理職層への全般的なマネジメント力強化を計画的に展開することである。

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