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週刊Neue Fahne

2023年07月18日号

マネジメント行動の再検証-9-「理想」と「現実」の狭間での苦悶

マネジメント業務に携わる者にとっては、「経営権の分担行使者」という自覚は当然のことながら、企業組織の「あるべき姿」を自らの言葉で語り、部下に伝える責任がある。自らの属する企業組織の「あるべき姿」について思考を巡らすことは、経営者の先行事項ではない。仮に一社員であろうとも組織が進むべき方向について語れなければ、社会に対して存在意義を示していくことができない。
  多くの経営者は社員に対して「経営方針を理解していない」と不満を吐露する。とりわけ創業経営者は、起業するに当たって事業を通して自らの目指す方向や思いを実現しようと考えている。そして、この思いが「経営理念」や「社是」などの形で成文化されている。もちろん成文化されていなくとも、経営者の日常会話の端々から創業時の思いや決意などを察することができる。

  創業者に限らず企業経営に携わる者は、事業の展開過程で発生してくるさまざまな課題や経営環境の変化への対応が必要になる。一言でいえば「変化対応」である。こうした変化を反映しているのが「経営方針」というものだ。従って、「経営方針」とは、ある期間内において会社の進むべき方向などを示すものだ。一方で企業組織の「あるべき姿」に思いを馳せるとは、経営に携わる全ての者が自分自身の矜持を確認する行為でもある。
  企業組織の「あるべき姿」は単にお題目などではなく、企業組織に働く者一人ひとりの矜持が体現されてこそ周囲へと伝播していくものだ。企業組織にとって「あるべき姿」とは、組織を構成する一人ひとりの多様な「価値観」を尊重しつつ、ペクトを合わせていく基底ともなるものだ。

  企業組織の「あるべき姿」を追い求める行為には、職位・職階の違いや新人とベテランの区別があるわけではない。同じ組織の下で協働意欲がある者すべてにかせられている。つまり、さまざまな肩書を超えて一人ひとりが「あるべき姿」を追求していく当事者でなければならない。この追求の当事者であるためには、あくまでも協働意欲が問われるため、敢えて雇用形態の差異さえ問題にしてはならないはずである。
  問題としなければならないことは、企業組織と自分自身が進む方向が合致しているか否かの検証である。この検証の過程で仮に「自分が居るべき組織ではない」と判断したならば、無理に居続ける必要など全くない。今日では「一社に定年まで勤めあげる」などという行為は美徳でも何でもない。時として「組織ぶら下がり」てき発想と同列に扱われる場合もある。何よりも日本的な雇用慣行にドップリと浸かっている証左となる。

  経営を巡る外部環境と内部環境に規定されて、時にはやむを得えない事情で企業の方向が、本来自分が思い描く方向とズレが生じる場合もある。こうした状況に陥った時こそ、一人ひとりの仕事や働きに対する「思い入れ」の真価が問われる。仮に思考を停止させて「仕方がない…」で済ませてしまうのか。それともあくまでも「あるべき姿」の追求を忘れずに現実を受け止めつつ、ある意味で「理想と現実」の狭」の中で苦悶するのか。
  これからはこうした選択が問われる局面が多々発生することになることが必定となるだろう。いまおかれている企業組織の状況を受け止めつつ、あくまでも、本来的な「あるべき姿」を追求するとは、ある意味で「理想と現実」の狭間をウロウロする行為でもある。この「狭間」は、当事者にとって暫し煉獄とも感じられることもある。しかし、山積する毎日の業務や目の前の仕事をこなすことで精一杯ということをもって、思考を停止させる理由にしてはならない。あくまでも「あるべき姿」へのこだわりが、現状に流されない働き方を構築してくれるものだ。

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