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週刊Neue Fahne

2026年02月02日号

中小・中堅企業に内包する管理職人材の課題-3-自然発生的にマネジメント意識は形成されない

 中小・中堅企業における管理職人材の問題を考える際、最初に確認すべき前提がある。それは、マネジメント意識は自然発生的に形成されるものではないという事実である。経験年数を重ねれば、あるいは肩書が変われば、意識も自動的に変わると考えられがちだが、そのような因果関係は存在しない。
 中小企業や多くのベンチャー企業では、若手・中堅層の離職率が高く、昇格が競争を伴わない構造になりやすい。その結果、管理職に求められる能力や役割が十分に吟味されないまま、立場だけが先行する。管理職になる過程で選別や鍛錬が行われないため、マネジメントを「学ぶ必然性」そのものが生まれにくい。

 このような環境下で顕在化するのが、部下育成への関与の弱さである。管理職が部下を計画的に育てるという発想を持たず、仕事は本人任せ、あるいは結果のみを問う形になりやすい。自らが体系的に教えられた経験を持たないため、何をどの順序で、どの水準まで教えるべきかを言語化できない。その結果、部下の成長度合いや課題を正確に把握できず、組織として人材が育たない。
 にもかかわらず、多くの企業は採用段階で「一般に優秀人材と見なされる人材」を求め続ける。業務内容や職務要件に即した能力定義を行わないまま、高い潜在能力や汎用性を前提とした採用を志向する。しかし、そのような人材は市場価値が高く、外部労働市場でも通用する存在である。育成を前提としない組織に定着しないのは、ある意味で必然と言える。

 ここで改めて確認しておきたいのは、「意識」そのものの捉え方である。そもそも、意識を意図的に「変える」ことはできない。意識とは、外部から直接操作できる対象ではなく、行動の積み重ねによって形成されるものである。研修や掛け声によって意識が変わるかのように扱われがちだが、行動が変わらない限り、意識が形成されたとは言えない。「分かるとは、行動が変わることである」という言葉が示す通り、理解とは認知の問題ではなく、行動の問題である。管理職がマネジメントを「分かった」と言えるのは、部下への関わり方、意思決定の仕方、仕事の進め方が実際に変わったときだけだ。行動変容を伴わない理解は、理解していないのと同じである。
 マネジメント意識が形成されていない組織では、共通した現象が連鎖的に発生する。目標や課題、その意義や優先度が不明確になり、役割や責任分担は曖昧になる。部門間や個人間のコミュニケーションは不足し、意思決定のプロセスは組織の実態に合わないものとなる。権威関係が不明確なため不信や抵抗が生まれ、相互作用のパターンは固定化する。これらはすべて、管理職が組織を意識的に動かそうとしていないことの帰結である。

 マネジメント意識を形成するためには、組織の内側だけで完結しない視点も不可欠だ。社会や市場といった「表の風」に触れ続けることで、「わが社の事業は何か」を問い直す必要がある。自社の製品や技術を起点にするのではなく、顧客の課題から事業を捉え直す姿勢が、組織の行動を変えていく。
 管理職自身が仕事の面白さを手放してはならない。自ら目標を設定し、優先順位をつけ、計画的に仕事を進めることは、本来仕事の中核にある行為である。「忙しくて時間がない」という言葉に安住する状態は、場当たり的な作業に追われ、思考停止に陥っている兆候にすぎない。
 過去のやり方への安住は、「今まで通り」という発想を固定化し、ぶら下がり意識を生む。経験や勘だけに依存する姿勢は、変化への感度を鈍らせる。心地良さはやがて判断力を奪い、いわゆる「茹でカエル」の状態に陥る。仕事を常に自分事として捉え、自分はいま変化に鈍感になっていないかを問い続ける必要がある。
 マネジメント意識は、偶然に生まれるものではない。行動変容を前提とした関与と設計を通じて、はじめて形成されるものである。中小・中堅企業が人材で競争力を持つためには、まず管理職自身がその事実を直視することが求められている。

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