人材育成が社員と会社組織の協働を創りだす

HOME >週刊Neue Fahne(中小・中堅企業に内包する管理職人材の課題-4-お山の大将♂サする危険性)

お問い合わせはこちらから 03-5297-1866

お問い合わせフォーム

株式会社ノイエ・ファーネ

東京都千代田区神田錦町1-4-8
ブロケードビル5階B

TEL.03-6260-5700 FAX.03-6260-5701

週刊Neue Fahne

2026年02月16日号

中小・中堅企業に内包する管理職人材の課題-4-お山の大将♂サする危険性

 中小・中堅企業において、管理職のレベルが組織成長のボトルネックになっている例は少なくない。管理職研修を実施しても反応は鈍く、「忙しい」「今さら必要なのか」という声が上がる。現場の社員は上司に不満を抱きながらも諦め、経営層も深刻には受け止めない。こうした停滞の背景には、管理職がお山の大将♂サしやすい構造が横たわっている。

 第一の要因は、自分自身を相対化する機会の乏しさにある。大企業では人事異動や配置転換が頻繁に行われ、そのたびに社内での評価や期待値を突きつけられる。異動は、ときに残酷なほど率直に自分の現在地を示す。一方、中小企業では異動自体がほとんどなく、長年同じ部署、同じ役割に留まることが珍しくない。結果として、自分のマネジメントがどの程度通用しているのかを検証する機会を持たないまま、肩書だけが上がっていく。
 第二の要因には、「マネジメント」よりも「プレイング」が重視され続けてきた歴史がある。小規模組織では、社長や古参社員が最大の稼ぎ手であり、管理に専念する余裕はない。ルールや制度を整えるより、口頭指示や阿吽の呼吸のほうが早い。感情や人間関係が意思決定を左右し、公私の境界も曖昧になる。この状態は、立ち上げ期においてはスピードと柔軟性という「強み」として機能する。

 組織は規模として10人を超えた段階で状況が一変するものである。トップ一人の目が全員に届かなくなり、役割分担と管理が不可欠になる。それにもかかわらず、仕組みとしてのマネジメントを導入できないまま規模だけが拡大すると、管理職は「プレイヤーの延長線」でしか育たない。管理とは何かを学ばないまま、部下を持つ立場になるのである。
 さらに問題を深刻にするのが、「倍率一倍」の昇格構造だ。中小企業やベンチャー企業では、20〜30代で多くの人材が離職する。その結果、40〜50代になると、残っている人の大半が管理職や役員になっている。そこに競争はなく、比較対象もない。管理職になれたという事実が、能力や適性が評価された結果であるかのような錯覚を生む。
 同期がいなくなり、異論を唱える存在も減り、いつの間にか自分のやり方が「正解」になる。だがそれは、閉じた組織の中でのみ通用する基準にすぎない。外の世界を知らず、他社の管理職と比較されることもなく、本人に自覚のないままお山の大将≠ェ出来上がる。この管理職の下では、部下は育ちにくい。優秀な人材ほど違和感を覚え、やがて組織を去っていく。

 本質的な問題は、個々の管理職の資質や努力以前に、「社歴が長い者が管理職になる」という暗黙の前提そのものにある。競争なき昇格、比較なき評価、振り返りなきキャリアの中で肩書だけを得た管理職は、自身の力量を相対化する機会を持たない。その結果、外の基準を知らないまま、限られた組織の中でのみ通用する価値観を絶対視しやすくなる。
 これがお山の大将♂サであり、本人に自覚がない点が最も厄介だ。こうした管理職が組織の要所を占める限り、人は育たず、挑戦も生まれない。管理職とは「長く在籍した者への報酬」ではなく、「組織を次の段階へ引き上げる役割」である。その定義が曖昧なままでは、組織は静かに停滞していくしかない。

一覧へ

ページのトップ