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週刊Neue Fahne

2026年03月02日号

中小・中堅企業に内包する管理職人材の課題-5-力量の低さを自覚することから始める

 中小・中堅企業における管理職の多くは、「管理ができるから」ではなく、「長く勤めたから」「現場で成果を出してきたから」という理由で、その座に就いている。これは個人の資質というより、構造の問題である。競争相手がいないまま年次とともに昇進し、管理職としての力量を問われない。いわば「生存者利益」による自動昇進が常態化している。
 その結果、管理職になっても思考や行動様式はプレイヤー時代のまま止まる。「自分がやったほうが早い」「任せるとミスが増える」という発想から抜け出せず、部下の育成や業務の仕組み化を後回しにする。短期的には回っているように見えても、組織としての再現性は一切高まらない。人が増えれば増えるほど、管理職本人がボトルネックになっていく。

 多くの中小企業では管理職教育に十分な投資がなされてこなかった。「忙しくて研修に行かせられない」「現場で覚えればいい」という言葉が免罪符のように使われ、結果としてOJT頼みの属人的なマネジメントが世代を超えて再生産されている。指導の質は上司の性格や経験に依存し、部署によって当たり外れが激しくなる。これは教育ではなく、単なる放置に近い。
 企業規模が拡大し、売上が10億円、20億円と伸びていく段階になると、こうした問題は一気に表面化する。社長一人の号令では現場は動かず、経営の意図を翻訳し、具体的な行動に落とし込む中間管理職の力量が問われるからだ。ここで管理職が機能しなければ、組織は成長痛ではなく、成長停止に陥る。

 自らの力量不足を自覚している管理職は驚くほど少ない。マネジメントを技術ではなく精神論で捉え、「経験がすべて」「現場を知らない理論は役に立たない」と外部の知見を拒絶する姿勢すら見られる。実際、中小・中堅企業の管理職で、ピーター・ドラッカーの著作を一冊も読んだことがないというケースは珍しくない。これは個人の読書習慣の問題ではなく、「学ばなくても管理職でいられてしまう環境」の問題である。
 2026年現在、労働人口の減少により、若手人材は企業を選ぶ立場にある。管理職の力量が低い職場では、優秀な若手ほど早く見切りをつけて去っていく。もはや「管理職の質」は人事課題ではなく、倒産リスクに直結する経営課題である。

 では、何から始めるべきか。答えは単純で、「自分は管理職として未熟である」と認めることだ。これは恥ではない。むしろ、管理職としてのスタートラインに立つ行為である。管理はセンスではなく、学習と訓練によって身につく技術だという前提に立たなければ、組織は変わらない。
 役職があることと、マネジメントができることは別物である。その現実を直視し、力量の低さを自覚すること。そこからしか、中小・中堅企業の管理職改革は始まらない。管理職は「できる/できない」で線を引く才能職ではなく、失敗を通じて上達する訓練職である。必要なのは、良質な失敗を許容し、そこから得られる健全な成功体験を地道に積み重ねていくことである。

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