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週刊Neue Fahne

2026年07月27日号

中小・中堅企業に内包する管理職人材の課題-19-ロールモデル無き管理職の悲哀

 中小・中堅企業の管理職を数多く見ていると、一つの共通した特徴に気付く。それは、自らが目指すべき管理職像、すなわちロールモデルを持たないまま管理職になっている者が極めて多いという事実である。現場で一定の成果を上げた結果として昇進し、その延長線上で管理職を務めている。しかし、その過程で管理職としての役割や組織運営、人材育成について体系的に学ぶ機会はほとんど与えられていない。
 このため判断基準は常に自分自身の経験だけになる。「自分もそうやって覚えた」「自分も苦労してきた」という経験則が唯一の拠り所となる。しかし、経験は重要ではあるものの、それだけでは組織を率いることはできない。経験とは過去の成功体験であり、環境や人材が変われば、そのまま通用する保証はないからである。にもかかわらず、多くの管理職は自らの経験を絶対視し、新たな知識を学び、自分自身を更新する努力を後回しにしてしまう。ここにロールモデル無き管理職の悲哀がある。

 その影響は中途採用者を含めた人材育成に顕著に表れる。自分が十分に教えられた経験を持たない管理職は、部下(新人・新任)への教え方も知らない。業務を説明したつもりになり、「あとは自分で考えろ」と現場へ送り出す。本人は権限委譲のつもりかもしれないが、実態は単なる丸投げである。そして部下が成果を出せなければ、「主体性が足りない」「最近の若者は受け身だ」「想定した動きをしてくれない」と責任を部下へ転嫁する。しかし、その部下もまた、何をどのように考えればよいのかを教えられていないのである。
 やがて部下は「言われたことだけをやればよい」と考えるようになり、指示されない仕事には手を出さなくなる。一方で陰では上司を批判し、自分は被害者であるかのように振る舞う。しかし、それもまた上司と同じ思考様式をなぞっているにすぎない。結局、自ら学ばず、人のせいにする姿勢まで再生産されるのである。これでは人材は育たない。育つのは、せいぜい現在の管理職と同じ水準の人材だけである。結果的に組織の成長は望めなくなる。

 マネジメントとは人を管理する仕事ではない。人が成果を出せる環境を整えるのが仕事でありミッションでもある。仕事の目的が共有され、必要な情報が流れ、役割が明確であり、失敗から学べる環境を整備することこそマネジメントを担う者の本来の役割である。そのためには、自分自身が学び続ける姿勢を持たなければならない。経営を理解し、組織論を学び、人材育成を学び、自分の判断を常に検証することで初めて部下に適切な支援ができる。
 しかし、ロールモデルを持たない管理職は、自らの経験だけを正解だと思い込みやすい。しかも役職が上がるほど周囲から率直な助言を受ける機会は減り、「自分のやり方は正しい」という小さな成功体験が固定・凝縮化されていく。その結果、自分より優秀な人材を育てることができなくなる。人は自分が学んだ範囲までしか教えられず、自分が理解している水準までしか育てられないからである。組織が停滞する原因は、必ずしも社員の能力不足ではない。マネジメントを担う者自身の学びが止まっていることにある場合も少なくない。

 企業組織は未来に向かって成長し続けなければならない。成長するとは今日的には「存続する」ことと同意語でもある。しかし、管理職が昨日までの成功体験だけで組織を運営している限り、未来を創ることはできない。現場でマネジメントを担う者は、自分自身の経験を伝承する存在ではなく、自分を超える人材を育てる存在である。そのためには、自分が知らないことを認め、外部から学び、他社の優れた実践を取り入れ、自らの考え方を更新し続ける謙虚さが欠かせない。
 ロールモデルとは、単に優秀な上司を意味するものではない。学び続ける姿勢そのものが、部下にとって最大のロールモデルとなるのである。経営者が本当に取り組むべき課題は、管理職層を現場の延長線上で育てることではない。管理職自身が学び続ける仕組みを組織の中に構築することである。学習する管理職が増えたとき、初めて管理職は自分と同じレベルの人材を再生産する存在から、自分を超える人材を育てる存在へと変わり、組織もまた持続的な成長軌道に乗る。

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